コロナ戦争勝利法(呼吸器内科専門医より)

半生を呼吸器内科医として歩んだ元大学病院長が、大敵コロナ鎮圧の才略を追います

43 悩むコロナ戦士(医療従事者たち)②


 私が関与していた介護現場は、緊急事態宣言がでても、必ず出勤して仕事をし続けてきたのですが、介護職の方々が働いている超高齢社会の介護施設の現場は、すでに以前から人材不足にあえいでいました。

 

 ただでさえギリギリの状況に、この新型コロナウイルスです。感染の不安や施設への風評などで勤務を離脱する職員も出ました。特に、3密をさけるため通所型の介護サービスが利用しにくくなり、訪問看護・介護が主体となりました。

 

 訪問看護の現場では、自分で体温すら測れない利用者様もいらっしゃり、訪問してから発熱に気付くこともありますから、介護職の方々は毎日が命がけであります。

 

 また、介護施設でも面会(対面)できない状態が続いています。勤務している長岡の介護施設では、「一目でも姿を」と、玄関先のガラス越しに本人と会う家族を垣間見ると、眼がしらに涙が溢れます。

42 悩むコロナ戦士(医療従事者たち)①

 6月2日の公表では、医療関係の感染者数が1590名を占め、そのうち約6割が看護職(看護師、看護助手)で占めていました。


 看護職は、患者さんと受診から退院まで多くの過程で接触するため、感染者が増えているとの懸念に加え、本邦では看護教育において、感染症科、呼吸器内科における感染対策の教育がしっかりされていないと思います。

 

 ある看護職の方によると、いままで感染症患者さんの対応にあたったことがなく、最初は防護服の使い方も知らなかったそうです。重症の呼吸器内科の患者さんは、どんどん粘稠痰が出ますから、こまめに体位を変えたり、痰の吸引をしたりと患者さんに接触することが多く、大変な仕事です。そのうえ、自分を守るための防護服とN95のマスクで息苦しく、動きづらいのです。


 看護職の方々は全て、コロナ戦士としての恐怖を使命感で支えながら、心身ともに過酷な状況で職務を全うしています。

 

 行政には200億かかったマスク支給も大事でありますが、コロナ戦士に対し、「防護具提供、危険手当, 保障等支援が必要」と思う今日この頃です。

 

41 秋冬コロナとインフル流行期に向け、還暦を過ぎたら肺炎球菌とインフルエンザワクチン接種をお勧め

 私は先週、3年前に接種した肺炎球菌ワクチンを再び自費で行いました。肺炎球菌ワクチンそのものはコロナワクチンには効果なくも、重症化の予防措置となります。
 新型コロナウイルスに感染する可能性はどなたでも持っていて、医療従事者は当然確率が高いと思います。

 

 慢性呼吸器病、喫煙、糖尿病、肥満など基礎疾患にり患しているコロナのハイリスク年齢層は、インフルエンザ流行前に、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンを接種し、重症化の回避を心掛けるべきです。

 

 第4話(治療薬はサイトカインストームを抑制する物質か?)、第19話(なぜコロナは重症化するの?)でも詳しく書いていますが、免疫が暴走(サイトカインストーム)して重症化しないよう、インフルエンザや細菌性肺炎を合併しないように、コロナの嵐(ストーム)が来ないように「予防」が必要と思います。

 

40 ワクチン接種は来春か!

 第18話(ワクチンは来年オリンピックに間に合うのか?)にも書いていますが、ワクチンを我国で接種できるのは来春の可能性が出てきました。しかし各国のワクチンは、オリンピックに間に合うのでしょうか?

 

 オリンピック時に、南半球の人々に行き渡るのは微妙な状況と思われます。オリンピック開催も重要でありますが、全人類のコロナ戦争勝利法は、ワクチンが開発され、全世界に供給されて初めて勝利宣言ができるのであると思います。

 

 かつてオリンピックは、いずれも戦争により過去5回中止になっていますが、今回のコロナ戦争の犠牲者は世界大戦にも匹敵する恐れがあり、おそらく来夏のオリンピックの時でも南半球などでは苦戦が続くと考えられています。

 

 政府・東京都は、オリンピック中止回避のため簡素化案など考えていないで、早めに中止宣言をして、平和の祭典オリンピックに莫大な資金を使わずに、南半球の国々、途上国の人々にワクチンを供給するのも一考ではないでしょうか。

 

 メダルを目指し日々研鑽を続けたオリンピック選手には申し訳ないのですが、そうすれば、コロナ戦争の戦勝国としてピカイチの王冠(コロナ)が、日本に輝くはずです。

 

39 東京はもう第2波の到来か?

 昨日は東京にある非常勤病院で、発熱外来以外の一般呼吸器内科外来を行いました。診察室の床にはピンク色のビニールテープでゾーン分けし、私はフェイスマスク+業務用マスクを着用し、重装備でコロナ常在戦場に対応しました。患者さんは今の時期、病院を訪れたくないのに、わざわざ私の外来を受診下さり心から感謝です。

 

 さて、31名の患者さんを診察しましたが、そのうち5名がコロナ感染を疑い、その内1名はコロナ患者さんでありました。そして、報道をみていると東京アラートが解除されたにもかかわらず、毎日50名前後の患者さんが拡大していて、むしろクラスターの不明な無症状の若者感染者が増え、市中感染の様相を呈していまして、懸念している次第です。

 

 東京都知事選挙とは関係ないかも知れませんが、東京アラートを出すならば、東京だけでも緊急事態宣言を延ばしても良かったと思いますが、医者の勝手でしょうか?

 

 心理的・哲学的には、人と人の動きをブロックすることは、心が堪えられない事であります。かつて、人の行き来をブロックした象徴であるベルリンの壁を、東ベルリン側から見学すると、命を懸けても乗り越えたい人間の心理を感じましたが、コロナの壁も制限を解除して行き来したいのはやまやまでしょうが、行き来を自粛するしかないのでしょうか?

 

 悩ましいところです。

38 対コロナは常在戦場(山本五十六)で戦いましょう

 常在戦場とは「常に戦場にあり」の意味で、太平洋戦争時における連合艦隊司令長官 山本五十六の言葉であり、長岡出身の山本五十六の信条であります。

 

 私はこの4月1日より緊急宣言中、約3か月間、仕事で東京と長岡を(医師免許コピーを携えながら)週1往復していました。東京ではコロナ患者さんを非常勤病院で診察、長岡では老健にてコロナ対策等を行い、きわめて多忙な日々でありましたが、長岡では尊敬する山本五十六の記念館をよく探索いたしました。

 

 今まさしくコロナ戦争の真っ最中であるのに、社会は非常事態宣言も解除され、東京の街には人が溢れ始めました。人々は感染が終息したと、希望的観測に浸っています。しかし、ワクチンも特効薬も開発されていない今日、インフルエンザ流行と重なる秋・冬には、第二波第三波は必然的に起こるでありましょう。

 

 対コロナ戦争の勝利法は、平素の日々で常在戦場の緊張を持続し、常に消毒・マスク・うがい・ソーシャルディスタンスを保ちながら防戦(コロナ予防)する他ありませんが、いかがでしょうか?

 

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37 「8050親子」とコロナ

 80歳代の高齢の親と50歳代の中年の子供が同居する2人家族(8050親子)の家庭は、介護・訪問看護・通所リハビリ等でよく見かけますが、コロナ戦争がはじまり、50歳代のお子様の方が仕事に就けなくなり、80歳代の親も施設に来なくなってしまいます。その結果、親子で引きこもり、社会とのつながりが薄れるケースが増えてくるように思います。
 そのため、「8050孤立死」が増えてくるのではないかと、懸念されます。このことは、コロナによる社会・経済に対する影響の1つであります。

 

 したがって、8050高齢者親子の就労支援は当然ですが、コロナによる自粛で、人と会う機会が減り、孤独を感じてコロナうつ状態になってしまうでしょうから、行政は感染対策ばかりでなく、相談員を増やし、心のケアー、個別指導・支援、明るい会話こそが、8050高齢者親子を救ってくれると思います。