22 コロナ後の社会(1) 主役は「生命を守る産業」
疫病の世界史を見ると、その後社会・経済は大きく変化しています。世界史のパンデミックは14世紀から、ヨーロッパの人口の3分の1を減らした「ペスト」、その後「コレラ」、18世紀後半からの産業革命と並行する「結核」等、疫病の危機的な状況は文明のあり方に根源的な問いを突き付けてきました。
今回の新型コロナウイルス危機は過去一世紀で最悪の事態になるかも知れません。新型コロナ後は突然価値観が変わり、逆にまっさらな白紙の状態になり、自由にデザインできる無限に近いチャンスを与えてくれる可能性もあります。
おそらく人間全体が最も幸せな暮らしを模索するとなると、経済は「1つの手段」に過ぎなく、利潤の最大化を求めるのでなく「ソーシャルビジネス」という考え方です。
その目的は、人間や社会を脅かす問題を解決することです。そのためには現在の経済の方向を変えて「生命を守る産業」に集中する必要があります。すなわち衛生、食糧、教育、医療、研究、安全保障などで、他者と共感して誰かを守る産業が主役となるでしょう。
今疲弊している医療従事者の皆様、考え方を新たにして頑張りましょう。
21 コロナウイルスは変異体するから厄介
新型コロナウイルスの遺伝情報は半月で変異して米国の解析では17種類にのぼります。遺伝子解析をするシークエンサー(遺伝子解析装置)でゲノム解析をしますと、主に(中国型)(欧州型)(米国型)に分類されますが、その変異は17種類にも上り、世界で感染者が増えるにつれて変異が上昇しています。
変異し続けますと、感染力が強いウイルスが出現する恐れがあります。したがって対策には明暗があり、今まで経験したことのない新型コロナウイルスとの戦いは、変化してしまうウイルスゆえ、間違っていた情報を謙虚に訂正して行く必要があります。
日本海側の天気(女心・笑)は分ごとに変わることがありまして、常に予防対策として雨具が必要なようです。新型コロナウイルスも早急な予防対策やワクチン開発が必要と思われます
20 日本も(第二波)懸念
5月15日 緊急事態39県が解除されましたが、解除されていない東京・福岡など緩みが見られるようです。
おそらく6月には日本全体の緊急事態が解除されるでしょうが、世界各国、韓国、シンガポール、イランなど第2波の感染拡大がみられ、北海道は宣言解除後に感染拡大しています。
今後規制が解除されて、検査対応が遅れれば遅れるほど無症候の感染者が野放しとなり、クラスターが発生しますと、第2波、第3波が発生するのではないか?と懸念しております。
毎年秋、冬、インフルエンザ流行期になると一千万人近くの患者さんがかかり、我々呼吸器内科医師は季節労働者と言われていますが、新型コロナウイルス流行と重なったら?と思うと身に鳥肌が立つ思いです。
検査体制、医療従事者の確保、コロナ専門病院の構築等、早急な対策が必要と思われます。
19 なぜコロナは重症化するの?
最初は風邪のような症状の人々が8割であり自然に治ってしまいますが、それらの軽症者は今ホテルで隔離されています。そして残り2割が重症化します。したがって5人に1人は重症化する新型コロナウイルス疾患は社会的に大問題であります。
感染者が5万人になれば、必然的に一万人が重症化して、その結果何千人という方が亡くなってしまうのです。今世界での感染者は463万人、死者31万人に達しています(5月18日現在)。ではなぜ重症化するのでしょうか?
そのメカニズムの解明の成果はすでに出ていまして、特に重症化しやすい基礎疾患を持つ方々及び喫煙者が重症化します。慢性閉塞性肺疾患(COPD)、高血圧、糖尿病が共通の疾患であり、要因として浮上しているのは、特定のタンパク質であるウイルスが感染する時に使う(ACE2,アンギオテンシン返還酵素2)であります。
図のごとく、ACE2は細胞表面にある受容体タンパク質で、新型コロナウイルスには突起状のスパイクタンパク質が多数あります。これを(鍵)とするとACE2が(鍵穴)となって結びつき、その結果ウイルスが細胞内に侵入し、増殖し、感染となります。
前記した疾患以外には、腎疾患、特に透析患者さんは重症化しやすいのです。人間五臓六腑のうち、外界に接している臓器は肺と腎臓だけです。腎臓は大量の酸素を使うため肺と同じく、腎臓の細胞にはACE2が多いことから重症化の一因になっています。
フランスでは4月上旬(透析患者さんの2.5%が新型コロナウイルスに感染した)と言われています。また欧州疾病予防管理センター(ECDC)は「喫煙でACE2が活性化するため、喫煙者が感染すると重症化する可能性がある」と指摘しています。
ヘビースモーカー、COPDであった、(志村けんさん)の突然の死を忘れてはなりません。
18 ワクチンは来年オリンピックに間に合うのか?
ジェンナーが100年前種痘ワクチンを牛(ワクチン)から発見して以来、人類VSウイルスの戦いで人類勝利の最大武器はワクチンであります。
結核は、生ワクチン、インフルエンザは不活性化ワクチンが開発され、鶏の卵の中で培養した細胞でウイルスを増やして作ります。
作る過程からウイルスそのものを使うため、増殖の確認をするために時間を要するのです。
しかし、新型コロナウイルスのワクチン開発は短縮して是非来夏の東京五輪・パラリンピックに間に合わせなければなりません。
そのためには「遺伝子ワクチン」と言われるウイルスの遺伝情報や遺伝子組み換え技術を使う新しいタイプのワクチンが最短で開発されています。
今、世界各国は米中など主導権争いをしていますが、ノールウエイにある国際組織の感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)におけるワクチン開発及び、米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏多額寄付会社のビル&メリンダ・ゲイツ財団などは、国の利権を超えた人類の為の開発を進め、大変興味深い試みです。
17 「9月入学」は今だ!
私は小学校1年生より母子家庭になりましたが、母は私の教育費や生活費を捻出するため、生け花の草月流師範となり、生け花教室を経営していました。
母は父から感染をうけた結核症の後遺症で慢性気管支炎を合併していても水回りの多い仕事場で、いつも苦しそうに生花をあつかっていました。
3月・4月は年度末・年度初めとなり忙しそうに働いていて、小中高の卒業式、入学式で母の出席はなく、子どもながらにさみしかったのを憶えています。
信州大学医学部大学院2年生のときフランス政府給費留学試験に合格となったので、4月フランスへ出発したが9月に給費されるまでひもじい思いをした事をいまでも忘れません。
新聞報道では大都市園は6割以上が(9月入学)賛成していて、年齢が若い人ほど賛成者が多くなります。反対している方は文科省官僚や自称教育学者が多く、慎重派で保守的でグロウバルスタンダードに変える勇気がない人々であるとおもわれます。
今日本の大学競争力は国際的に下がる一方でありますが、9月入学はデフレスパイラルをストップできる可能性があると思われます。温暖化の桜散る4月入学よりも、秋は学習の時期、枯葉のシャンソンの時期、9月入学の方が人生を深く感じるのは私だけでしょうか?
16 防衛省・自衛隊による素晴らしい医療体制
私は、かつて防衛医科大学呼吸器内科の指導医として12年間勤務していました。当然有事の際の呼吸器感染症対策は重要な教育、研究の命題でありました。
今、その当時の教え子が自衛隊中央病院、陸上自衛隊化学学校(大宮)などの中枢に勤務していて、誇らしい限りであります。先ずは1月31日クルーズ船(ダイアモンド・プリンセス号)や中国・武漢からの帰国者等感染対策の任務にあたり、自衛隊中央病院ではすでに陽性者200名近くをうけいれていますが、1名も院内感染には至っておりません。
現自衛隊中央病院長X先生は仕事を以前共にし、呼吸器内科専門医であり極めて優秀なDr.でありますが、「専門医官が少なすぎる」と聞いておりました。
日本のコロナ戦争勝利法は、防衛医科大学出身者だけに国防を任せるのではなく、イスラエルのように民間が感染症防衛に積極的に参加して、民間の医科大学・病院などで、多数の呼吸器及び感染症専門・医療従事者を育成して、感染症対策のノウハウを共有することが急務と思われます。
それこそが、コロナ戦争勝利法ではないでしょうか?