コロナ戦争勝利法(呼吸器内科専門医より)

半生を呼吸器内科医として歩んだ元大学病院長が、大敵コロナ鎮圧の才略を追います

29 人工呼吸器と人工心肺装置(エクモ)の操作は24時間

 先日出張先にて、睡眠無呼吸症候群および禁煙外来が早く終了したゆえ、完全武装してコロナ患者さんを診察する予定でありましたが、教え子の医師が「先生は年齢ハイリスクですし、常勤でないゆえカルテ回診のみにしてください」と言われました。

 最初は「僕を煙たく年寄扱いしているな(笑)」と思いましたが、「老いたら子に従え」ゆえカルテ回診と、呼吸器集中治療室(RCU)を窓越しに見学のみとしました。

 

 窓越しに見る呼吸器集中治療室(RCU)内部はまるで戦場であり、知人の医療従事者の神々しい姿を拝見し、心を揺さぶる感動を覚えました。人工心肺装置(エクモ)のまわりにはナース2人、臨床工学士(SE)2人、器材を運ぶヘルパーさん1人、計5人が前線戦士そのものであります。

 説明してくれた教え子還暦司令官曰く「(私から)教えて頂いた呼吸管理技法はコロナ戦争では役に立たないです」と笑いながらおっしゃっていました。

 

 その時、僕は「老兵は去るのみ」の映画を思い出しましたが、「いや待て、僕に出来ることは何か?」、コロナ戦争に勝てる医療人を育成することが必要であり、その神々の処遇を改善させるよう、社会に訴えることと気がつきました。その育成した神々のコロナ戦士医療人に闘ってもらい、ぜひコロナ戦争に勝ちたいものです。

 

 老兵でもまだやることはありそうです(笑)

28 コロナ後の社会(7) 大学はDX(デジタル・トランスフォーメーション)

 インターネットがもたらした変革は従来の「やり方」を見直すDXという、トレンドに社会・大学が変わらなければなりません。DXはインターネットの技術のことを指しているのではなく、進んだ情報通信技術を活かし、私たちの社会・生活・社会構造などを全て見直し、やり方レベルから根本的に「変える姿勢」こそがDXの本質であります。

 

 日本は、ビジネス界ですら、海外に比べてDXは遅く、特に日本の大学は「この程度なら鍋からとびださなくても良い」と変化を好みませんでした。

 しかし新型コロナウイルスは「変えらざるをえない」状況をつくりだしました。大学はDXを実行しなければ生き残れないコロナ後の社会です。

 

 進化論ダーウィンが訴えた「変われるもののみが生き残れる」の諺の通り、今こそ、大学のDXが問われています。

 

27 コロナ後の社会(6) 特定機能専門(感染症・呼吸器)ナースの大欠乏

 かつての看護大学の教え子ナースからお電話を頂きました。「やっとコロナ病棟から開放され生還しました。」と涙ぐんでよろこんでいました。

 2ヶ月前は外来ナースでありましたが、優秀故、コロナ病棟に急遽配属となり、家族にも逢わずに奉仕の精神で頑張ったようですが、ほんとうにご苦労様でした。

 

 この2か月間、看護師さんの精神的負担はピークに達していて、感染症に対する勉強など準備不足の不安のみならず、看護師およびその家族への偏見や差別があったようです。

 

 いずれにしてもパンデミックは突然やってきます。コロナ後の対策として、いつパンデミックが到来しするかわからないため、感染症・呼吸器の専門ナースの早急な育成が必要と思われます。

 本邦では、日赤、防衛医大看護専門学校、独協医大のみで、今後のパンデミックには大欠乏でございます。

 

26 コロナ後の社会(5) コロナ受け入れ病院の倒産の危機

 コロナによる医療崩壊は、長年続いて来た医療費抑制政策が要因ともいわれています。そのため高額医療機器や医療資材の備蓄が出来なく、医療従事者は感染の危機にさらされ、患者さんの受け入れ態勢ができないまま一般病棟に受け入れたため、院内感染が発生してしまいます。

 

 院内感染が発生したら、最低2週間はすべての科の新患が休診となり、オペも延期となるゆえ、大幅な減収となります。もともと60%以上の病院は赤字で、ほとんどの病院の人件費は50%以上に上ります。したがって、コロナ患者さんを受け入れた病院は大赤字と思われます。

 

 私もかつて大学病院長時代に、30億円の借金返済に苦労した憶えがあります。今回のコロナ患者さん受け入れ病院は、厚生労働省、東京都にお願いされて協力したわけです。これが長く続けば、たくさんの民間病院は倒産してしまいます。

 

 国、都はぜひ速く経済的支援策を実行してほしいと思います。

25 コロナ後の社会(4) コロナ現場の医療従事者への精神的なケアを

 私は時々都内の病院に非常勤で、睡眠無呼吸症候群の外来患者さんを看ております。4月に入り緊急事態宣言がだされた直後から、都の要請により、コロナウイルスの救急搬送を受け入れたゆえ、新型コロナウイルスの対応に追われ、がん患者さんなどで不要不急の治療や手術を延期せざるを得ず、外来もストップしてしまいました。

 

 先日久しぶり外来診察のため来院して感じたことは、医療従事者全ての人々がコロナに対する不安と恐怖で疲弊していて、ホスピタリティーの眼差しが失われている、ということです。事務幹部は前年度比の大幅な減収で自分の職場がなくなるのではないか?と考えているのか、みるからに笑顔がなく、うつ状態であり、マスク顔ですが目は血走っていて、辛そうでした。

 

 新型コロナウイルスは比類なき医療災害ゆえ、無理もないと思いますが、一日も早く病院に明るさが戻り、笑顔がよくわかるフェイスマスク美人をたくさんみたいと思うのは私だけでしょうか?

24 コロナ後の社会(3) 都市脱出

 今日まで感染症の流行は、ヨーロッパではしばしば都市のあり方について再考を促す原動力となっています。

 例えば今回のコロナ流行によって、最も打撃をうけたのは、都市部であります。都市化は資本の集中投下のよって資本経済の恩恵が多いものの、混雑する通勤、狭い住宅など三密の生活であり、重症化すると言われる高齢化社会にやさしい環境ではありません。

 また、直下型地震のリスクが多いゆえ、首都園を脱出するチャンスでもあります。世界の大都市では、感染の不安や外出禁止の不自由さに耐えられない人達は、地方へ脱出しています。

 

 企業も国家機関も機能を地方に分散する良い機会かもしれません。

23 コロナ後の社会(2) 大学教育はオンライン授業に

 信州大学パリ大学防衛医大東京医大において医学教育に従事したとき、いつも教官として反応があって充実した教育ができたのは、臨床実習教育にて、聴診器の診察法等、理学的所見の取り方を教えている時でした、学生も医者の卵として目を輝かせて参加してくれました。

 それに比較して座学の講義形式は教官が上目視線で知識を教えるわけですから、学生を居眠り、内職等々しないように引き付けるため様々な工夫をしてみましたが、至難の業でありました。

 

 昨今、インターネットがもたらした変革により、多くの海外の大学がオンライン授業が行われていたようであります。我が国は新型コロナウイルスの影響により、四月からの新学期から緊急事態宣言で学生は登校出来なく、急遽オンライン授業を導入するなどの慌てようです。

 毎年同じノートを読み上げ、厳しい試験を出し進級させなかった坊ちゃん「赤シャツ」タイプは、皆が見られるSNS上では、教育界では生きられなくなる時代となりました。

 

 コロナ後、大学も構造改革の比類ないチャンスと思われます。